繰り返される過ち



上の写真は、福島第一原発に津波が迫った当時の様子です。

6月30日、福島第一原発発事故の刑事責任を問う裁判が開始されました。

裁判の最大の争点は、「福島第一原発を襲った津波を東電の旧経営陣が予見できたのか」ということです。



2度にわたる東京地検の不起訴処分を経て、2015年7月、検察審査会は起訴すべきと議決しました。

そのきっかけとなったのは、武藤類子さんを団長とする福島原発告訴団や弁護士らによる粘り強い資料の開示請求でした。

そして、今年3月、事故の予見可能性を認める初めての判決が出たのです。

原発事故で福島から群馬に避難した住民らによる損害賠償訴訟で、前橋地裁が国と東電の責任を認めました。

前橋地裁が津波の予見可能性を認めた根拠は、政府の地震調査委員会が原発事故の9年前(2002年)に発表した「長期評価」でした。

長期評価では、「東北地方の太平洋側にある日本海溝のどこでも、マグニチュード8クラスの地震と津波が30年以内に20%の確率で発生する」と指摘されていました。



東電は、この長期評価に基づき、2008年3月時点で津波に関する試算を行っています。

その結果を示した内部資料には、福島第一原発に最大で高さ15.7mの津波が到来すると書かれています。

この為、前橋地裁は「津波は、実際に予見されていた」と認定したのです。(実際に襲った津波は、高さ15.5mだったと見られています)

更に判決では、非常用発電機を高台に設置するなどすれば、事故を防ぐことは、期間や費用の点からも容易だったと指摘しています。

そして、「経済的合理性を安全性よりも優先させた」と東電を厳しく批判しています。

加えて、国に対しても「東電に事故を防ぐ対策をとるよう命令すべきだった」と同等の責任を認めたのです。



上の人物は、地震学の第一人者である島崎邦彦東京大学名誉教授です。

2002年の「長期評価」を取りまとめた人物であり、今回の刑事裁判では、検察側の参考人として重要な役割を果たしておられます。

島崎名誉教授は「原発事故後、想定外という言葉が一人歩きしたが、原発では想定外は許されない」と語っておられます。

島崎名誉教授は、政府の地震調査委員会で長期評価を策定しましたが、発表前から一筋縄ではいかなかったと言います。

地震調査委員会は、阪神・淡路大震災の反省から設立されたもので、地震の研究成果を防災に生かすことが目的でした。

しかし、2002年に長期評価を公表しようとした際、圧力を感じたと言います。

その圧力とは、公表前に内閣府の担当者から送られたメールで、公表内容に修正を求める要請でした。

その結果、津波への対策がとられた地域は限定的だったと言います。

地震調査委員会は文科省の所属で、それに横やりを入れたのが内閣府という構図は、まさしく加計学園問題と重なっています。



上の人物たちは、東電の旧経営陣である勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長です。

東電は、2008年、津波の専門家である今村文彦東北大教授に長期評価について相談をしています。

そして、今村教授は、東電が試算した15.7mという結果の報告を受けます。

試算結果は想定を大きく上回るもので、津波対策は不可避とされ、東電の内部資料にも、そのことが書かれています。

しかし、国会の事故調査委員会では、勝俣元会長は試算結果の報告を受けていない」と証言し、武黒・武藤両元副社長は「報告を受けた」と認めています。

今回の裁判で、勝俣元会長は「津波の発生や事故を予見することは不可能だったと考えいます」と陳述し、3人とも無罪を主張しました。

一方、検察官役の指定弁護士は、「武黒・武藤両元副社長は、2008年3月の津波の試算結果を認識していた」と指摘し、「2009年には、後に福島第一原発の所長となる吉田昌郎氏が、勝俣元会長も出席した会議で、14m程度の津波が来る可能性があるという人もいる」と報告していたことを明らかにしました。

検察側は、「勝俣氏達は、巨大津波が来る可能性を知ることができたにもかかわらず、津波対策を先送りにした」と主張しています。



上の写真は、再稼働が決まった大飯原発(福井県)です。

島崎邦彦東京大学名誉教授は、昨年7月15日の記者会見で「私は納得していません」と、強い口調で語りました。

島崎名誉教授は、たった一人で原子力規制委員会の審査のあり方に疑義を投げかけ続けているのです。

島崎名誉教授は、「規制委や関西電力は、大飯原発の地震の揺れを過小評価している可能性が非常に高い」と考えておられます。

島崎名誉教授は、「断層の長さから地震の揺れを算出する方法は何通りもあるが、関電や規制委が用いている方法は、最近の熊本地震の調査結果などと比べると不適切で、別の式を用いて計算すべきだ」と言うのです。



島崎名誉教授は、規制委員を退任した時の記者会見で「私は、まさに人生最大の負け犬になって、尻尾を巻いて、そのまま黙ってしまった」と語られました。

内閣府(中央防災会議)の20044年の会議で、島崎名誉教授達が警告していた福島沖の大津波は、防災計画に反映されないことが決まったのです。

海底地形などから、明治三陸津波(死者約2万2千人)と同様の大津波が福島沖でも発生しうると地震本部は予測していましたが、切り捨てられてしまったのです。

島崎名誉教授が言う「負け犬」とは、その場面を振り返って悔やんだ言葉なのです。

「そんな津波は起きた記録が古文書にない」として、最新の地震学の予測を無視した内閣府の判断をおかしいと思ったにもかかわらず、島崎名誉教授は黙り込んでしまったのです。

島崎名誉教授は、「そのことが、津波による約1万8千人の死者・行方不明者や原発事故を引き起こしたのかもしれない」と自責の念にかられておられるのです。

そんな思いもあって、島崎名誉教授は「政府の判断に納得出来ない時は、もう黙っているわけにはいかない。声を上げ続けなければならない」と決意されたのかもしれません。

過ちを繰り返さない為にも、安全よりも経済的利益を優先する政府や電力会社に対して、国民一人一人が声をあげるべき時のような気がします。



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No title

試算の結果が15.7mで、実際の津波が15.5mだったということで、その予測の正確さに驚きました。
試算がなされた時点で、国も東電の旧経営陣も全く何も対策を打たなかったことに驚きと怒りを感じます。
目先の利益を追求するばかりに、多くの人々の生活を奪っただけでなく、今後何百年もの間、子孫達に負の遺産を残すことになった罪は誠に重いと言わざるを得ません。

Re: No title

>デュークパパさん
仰るとおりです。
これほど正確な試算ができたというのに、その対策を全くやろうとしなかったことに呆れます。
安全よりも目先の利益を考えたばかりに、取り返しのつかない事故を発生させ、将来に重大な負の遺産を残すことになってしまいました。
このことに対する東電の旧経営陣と国の責任は、限りなく重いと思えます。
プロフィール

カリーノパパ

Author:カリーノパパ
●シェリー(シェルティー母):
 とっても優しい理想的な家庭犬
 アンジェの母親です

2016.4.18永眠、享年15歳11ヶ月

●アンジェ(シェルティー娘):
 ボール遊びと食事が大好きです
 我が家で生まれました

●カリーノ(ラフコリーの女の子):
 ショードッグ
  【主なタイトル】
 JKCチャンピョン
 FCIインター・チャンピョン 
 【主な賞歴】
 2009年アジアインターBOB
 2010年ジャパンインターBOB
 2010年近畿インターBOB
 2010年東北インターBOB 
 2010年ペディグリーアワード
 【資格】
 JKC訓練資格CDⅠ

2014.12.9永眠、享年8歳5ヶ月

●ミシェル(ラフコリーの男の子):
 陽気で優しく、人が大好きです
 ショードッグ
 【主なタイトル】
 JKCチャンピョン
 【主な賞歴】
 2011年神奈川インターWD
 2014年熱海愛犬クラブ展WD
 2014年山梨東ドッグコ展WD
 2015年沼津愛犬クラブ展WD
 【資格】
 JKC訓練資格CDⅠ

●カリーノパパ(人間):
 ミシェル達のお父さん
 本職は建築家(一級建築士)
 犬、スキー、ゴルフ、車、絵画が大好き
 1974年から大手建設会社の設計部にて勤務
 1986年に海外部門に異動し、14年間海外勤務
 内13年間をロンドンにて勤務
 2012年に大手建設会社を定年退職
 同年5月から河口湖でスローライフ開始

●訪問ありがとうございます。
4頭の犬と一緒に暮らしながら、日々感じたことを綴っています。
ミシェルとミシェルのお父さんであるカリーノパパが、記事やコメントを書いています。

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